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サイエンスヒルズこまつ [ひととものづくり科学館・こまつビジネス創造プラザ]

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2020.4/5 【ヒルズ×金沢大学】講演会「金星探査機あかつき 新たな惑星科学を切り拓く」を開催しました!

更新日:2020年04月07日

 

宇宙への夢を現実へと紡ぐ
「金沢大学×ヒルズ 宇宙航空人材育成プログラム」!!
天文宇宙分野のエキスパートによる定期講演が本格始動しました!

今回は・・・
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授・今村剛氏による
「金星探査機あかつきが挑む金星大気の謎」のお話です☆

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のため、ヒルズでは初の試みとなるオンラインでの講演となりました!(今村教授にとっても初めてとのこと!)

今村教授は、10年前に打ち上げられた金星探査機あかつきのプロジェクトに関わっておられます

あかつきは金星周回軌道投入に失敗し、苦難の末に再投入に成功したドラマを持つ探査機として有名ですが、その顛末を語りだすと終わらない…ということで、今回は探査によって得られた成果についてお話しされました

ではカンタンにご紹介しましょう!


金星・地球・火星は隣り合う「地球型惑星」ですがその環境は大いに異なり、金星は灼熱、火星は極寒の星、地球だけが奇跡的に表面に液体の水があって、生命が育まれています

金星が表面温度500度近くにもなる理由は、太陽からの距離が近いことに加え、大気中の二酸化炭素による温室効果が金星に出入りするエネルギーのバランスを崩しているからです

地球では大気中の二酸化炭素がまず海に溶け、それが海中のカルシウムと結合して炭酸カルシウムとなり沈殿し、地中にたまっていきます

しかし金星には海がないため、火山活動などで地中の二酸化炭素が大気に放出されると、そのまま大気にとどまって二酸化炭素の濃度が高まるのです

それで過酷な温室効果が起こっています

また金星は、風の吹き方も地球とは違います

地球の中緯度帯では波打つように西から東へ風が吹き、赤道地方では全体的に東から西へ雲が流れて行く・・・というように、場所によって全然違う風が吹いています

一方金星では、ゆっくりした自転を追い越すように時速400km(秒速100mくらい)の風が同じ方向に吹いています

地球の風と違い過ぎるために、地球の気象学の常識が通じず、発見されてから現在までその仕組みは解明されていません

こういった惑星の自転と同じ方向に吹く非常に速い風「スーパーローテーション」と呼んでいます

これを理解することが、太陽系の気象学の課題にもなるのです

実は、土星の衛星であるタイタンにも、スーパーローテーションが吹くことがわかっています

タイタンは窒素でできた濃い大気を持つ星です

金星とタイタン、灼熱と極寒でだいぶ違うけれど、風の吹き方は似ているのです

また木星にも赤道付近で自転と同じ方向に強い風が吹いています(赤道スーパーローテーション)

これも金星やタイタンと同じ仕組みかもしれないため、それらをいっしょにして問題を解決しようとしている研究者もいます

一方、地球と火星は風の吹き方が似ていて、環境もよく似ています

金星の大気を詳しく調べるために日本が打ち上げたのが、金星探査機あかつきです

あかつきは「カメラ小僧のような探査機」です

コンパクトな体にカメラをギッシリ搭載し、金星の写真を撮りまくっています

カメラ毎に観測する光の波長が違うので、さまざまな金星の素顔を見ることができます

あかつきが撮影した違う波長・違う色のデータを組み合わせ、謎に包まれた金星の身ぐるみをはがそうとしているんです

実際に「熱潮汐波」「赤道ジェット」といった現象が観測され、少しずつスーパーローテーションの核心に近づきつつあります

さて、あかつきが撮影した画像の中には、驚くべき不思議な現象がいくつもありました

たとえば・・・

①「超巨大弓状模様」

赤外線で撮影したところ、南北方向に何千kmにも及ぶ温かい雲の領域が発見されました

その領域はスーパーローテーションによっても流されていきませんでした

これは「山岳波」という、高い山に風があたって作り出される現象ではないかと考えられています

地球の山岳波は小さいですが、金星の山岳波は北極から南極に渡る巨大なもので太陽系最大!

しかし、そのしくみはまだよくわかっていません

さらに不思議なのは、この山岳波が午後から夕方の地域でしか現れないということ・・・

これもまた解明中です

②南極・北極で急に低くなっている雲

赤外線によって雲の高さを撮影した画像から、北極・南極地方で雲の高さが何kmも急に落ち込んでいることや、赤道地方で雲の高さがデコボコになっていることがわかりました

③渦巻き模様の雲

赤外線で大気の深い所を見たところ、渦巻くような雲が発見されました

④雲の濃淡のはっきりした境界線

雲の濃淡の境界がはっきりと南北方向に現れ、スーパーローテーションより速いスピードで、津波のように東から西に伝わっていくことがわかりました

この現象がなんなのか、まだ説明することはできません

これらの不思議な現象が、スーパーローテーションを引き起こす原因になっているのかもしれません

あかつきの前に金星に行った数々の探査機によって、1978年から現在までの約40年間に、スーパーローテーションが速くなったり遅くなったりしていることがわかっています

地球にもこういった長期の気候変動は起こりますが、金星でのメカニズムはまだ謎です

もしかするとそこに、地球と金星をつなぐヒントがあるかもしれません!

ここまでは雲の画像を調べる話でしたが、あかつきには電波を使って金星を調べるミッションもあります

「電波掩蔽(でんぱえんぺい)」と言って、あかつきが地球から見て金星の後ろに隠れる時と出てくる時で、電波の周波数と強さが金星大気の影響で変化します

その様子から、より詳しく高さ方向の大気の層構造を調べるミッションです

長野県の臼田宇宙空間観測所のアンテナを使って電波を受信し実験をしたところ、ある高さで対流が起こり、よく空気がかき回されていることがわかりました

雲を作るのに、この対流が関わっているのではないかと考えられています

さて、こういった金星の探査は、宇宙のほかの惑星を理解する上でどう役立つのでしょうか?

惑星系における液体の水の存在可能領域を「ハビタブルゾーン」といいます

地球には液体の水があり、生命が存在することは可能です

一方、今の金星は生命が存在できる環境ではありませんが、昔は存在できたのかもしれません

火星についても同様です

金星と火星はけっこう微妙で、もしかするとかつては地球を中心として金星軌道から火星軌道までがハビタブルゾーンだったかもしれないと考えられています

これまで発見された太陽系以外の惑星に生命が存在できるかどうかを考えるときに、太陽系におけるハビタブルゾーンの範囲が分かると、ほかの惑星の場合を想像することができます

金星や火星はかつてハビタブルゾーンに入っていたのか、金星と火星がどういう道をたどり今の状態になったのかが、宇宙全体における生命存在可能性を知る上でとても大事になってきます

また、スーパーローテーションがハビタブルゾーンに関わっている可能性も示唆されています

太陽系以外の惑星で、中心の恒星に近いために恒星からの引力によって同じ面を恒星に向けて回っているものがたくさんみつかっています

その状態で放っておかれると、加熱されているところと冷たいところができ、夜側では大気が凍りついてしまいます

もしそこにスーパーローテーションがあると、昼側の熱が夜側に流れて温度がならされるため、穏やかな気候になる可能性があります

スーパーローテーションが、ハビタブルゾーンの範囲にかかわるカギを握っているかもしれないのです

 

さて、あかつきがいつまで観測できるのかは残っている燃料によって決まってきます

推定にはかなり幅があり、明日には尽きるかもしれないし、数年後かもしれません・・・

いつかは必ず終わりが来ます

最後まで探査をやり終え、結果を出していきますので、ぜひ今後のあかつきにも注目していてください!!

とのことでした(^O^)


Q. 金星以外に大気を調べるための計画はありますか?

A. 2024年に打ち上げられる日本の火星探査計画MMXでは、火星の衛星フォボスからサンプルを採取することが目的ですが、その間に火星の大気を気象衛星で調べるミッションがあります

JUICE(ジュース)という木星探査計画でも大気を調べるミッションがありますのでご注目ください

Q. あかつきはなんでキラキラなんですか?

A. あかつきは表面が金色のキラキラで覆われていますよね?

太陽の光をよく反射させるために薄い膜を何枚も重ねているんです

太陽の熱を反射させると同時に、探査機の中から熱が逃げて行かないようにもしています

毛布みたいなものですね

Q. 金星は、元々地球みたいだったかもしれないのに、なぜ今灼熱の星になったのですか?

A. それは研究者もよくわかっていません

金星には最初、海があったかもと考えられています

計算すると金星にはギリギリ海があってもいいことがわかりました

地球に比べると太陽に近いので、水が少しずつ蒸発していき、水蒸気が100kmまで昇って紫外線で分解されて水素と酸素になり、水素は軽いので宇宙空間に逃げていったのではないかと考えられています

水がなくなると、二酸化炭素が火山活動で大気中に出て行く一方になってしまいます

それで温室効果が進み灼熱になったのかもしれません

Q. どんな仮説を立てて金星に向かったのですか? また、裏切られた仮説はありましたか?

A. いいご質問ですね!

例えば金星の南北方向に動く波は、理論的には予想されていますが仕組みはまだよくわかっていません

仮説を立てて、それを調べるような予定を立てています

巨大弓状構造や何千kmにも及ぶ津波のような波は想定外でした

研究者としては、そもそも想定していなかった現象が見つかる方が楽しいです

これからも想定外がでてくるのではないでしょうか

ある意味、予想が裏切られる方が楽しみですね!


ほかにもたくさんのご質問、ありがとうございました!

講演の後も、WEBカメラとマイクを使っての質問は続きました☆

今村先生のお話は金星大気のように濃く、時間が経つのがスーパーローテーションのようにとても速く感じられました

今度はぜひ、実物の今村先生にお会いしたいものです!

最後になりましたが、今回の講演会にご参加された皆様、本当にありがとうございました!!

(文:解説員N)




2020.4/5 【ヒルズ×金沢大学】講演会「金星探査機あかつき 新たな惑星科学を切り拓く」を開催しました! – サイエンスヒルズこまつ