開館時間
4/1~9/30 9:30~18:00(有料観覧受付は17:00まで)
10/1~3/31 9:30~17:00(有料観覧受付は16:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌日。GW、夏休みは開館)、年末年始
更新日:2020年02月24日
各分野の専門家にご講演いただく「プロフェッショナルトーク」!!
今回は・・・公立小松大学 生産システム科学部 生産システム科学科 香川博之教授によるロボットと南極、そして雪のお話☆
【『SNOWFLAKE 雪は天からの手紙』上映】
雪はどこで生まれ、どうやって降るのか?
雪の結晶にはどんな種類があり、なぜ正六角形を基本としているのか?
そんな科学の話題を、美しいCG映像と坂本真綾さんの優しいナレーションで楽しみました。
そして、香川先生がご登場!
【南極を目指した理由】
中学時代、大好きな山口百恵さんの唄う主題歌につられてテレビを観ていた香川先生。
そこに映しだされたのは、世界初の衛星生中継放送による南極の景色でした。
昭和基地で働く観測隊員たちの姿は、南極といえば「タロとジロ」だったイメージをガラリと変えました。
また別の機会に皆既月食を体験し、自然の不思議さに魅了された先生は「南極地域観測隊員になって大自然を実際に見よう!」と決意するにいたったのです。
【観測隊員に選ばれるまで】
しかしその道のりは、平たんではありませんでした・・・
観測隊員になる方法は高校の進路の先生も知りません。
香川先生は自ら図書館に通い色々な資料にあたります。
そこで観測隊員の出身大学が書かれた資料を発見したのです。
最も多く名前が挙げられている大学に問い合わせ、毎年1人の大学院生が隊員に選ばれているという情報をGET!
そこに受験し合格しましたが、隊員になれる学科を間違えていたことが後から判明します。
それでもあきらめず懸命に勉強を続けたものの、ほかにも多くの希望者がいたため、残念ながら隊員の選抜から外れてしまいました・・・(涙)
しかし努力を怠らなった先生は「やれるだけのことはすべてやったんだから」と清々しく気持ちを切り替え、機械、電気、通信の勉強に励んだり、重機の運転などいろいろなことにチャレンジしていきました。
そうして南極のことなどすっかり忘れていた頃・・・再びチャンスは巡ってきたのです!
スキーや雪の研究をしていたことから道がつながり、45歳で夢の観測隊員に当選することができたのでした!
「一生懸命やっていれば必ず見ていてくれる人がいる!」と先生は確信したそうです☆
ところで、南極につながった「スキーの研究」とはどういうものなのでしょう?
【スキーを研究し始めた理由】
北陸に赴任した香川先生は、まずスポーツの研究を始めます。
その研究室へ「自分で考えたスキー理論を証明できるスキーロボットを作りたい!」という熱意を持った4年生が配属されて来たことが、スキーの研究を始めるきっかけとなりました。
さて、スキーを研究するくらいだから、先生はスキーがお上手に違いないと思いませんか?(私は思いました)
ところが香川先生曰く「自分はスキーが下手っぴー」なんだとか。
しかし、下手であることは研究をする上で大きな長所となるのだそうです。
下手な人は、上手な人とは違う視点で考えることができます。
またスポーツ用品をあまり大事にしないので、スキー板に穴を開けたりセンサーを取り付けるといった改造が何の抵抗もなくできるからなんだとか。
【どんな研究をしたか】
まずはスキーヤーにセンサーを取り付け、関節を曲げるタイミングや角度、雪面を押す力などを計測しました。
当時はノートPCがまだ普及していなかった時代。
センサーはもちろん電子回路もすべて手作りです。
その結果、スキーターンで大事なのは股関節の内外転(まっすぐ立った状態で腰を左右に動かすこと)、他の動きは補助的なものにすぎない、ということが分かったのです。
そこで、股関節の内外転と同じ動きしかできないロボットを作り実験したところ、雪の斜面を上手に滑走させることができました!
その後はたくさんの人々に協力を呼びかけ、数年をかけて様々な種類のセンサーを作り、スキーヤーの動きをより精密に測定していきました。
例えば・・・
・スキー板のたわみやねじれを測定するセンサー
・雪面からスキーエッジに作用する圧力を測定するセンサー などなどです。
このセンサーをつけた実験により、ターンをするとスキー板の真ん中近くに非常に強い圧力がかかり、スキー板がパタパタ振動するようにたわんでいることなどが分かりました。
そして次は、もう少し人間に近い動作をするロボットと傾斜角が変えられる人工芝の斜面を作って、関節をどのように動かすとどのようなターンができるのかを調べました。
ロボットを使うのは、人間がケガをしてしまうような動きも試すことができるからです。
その結果「滑る人が誰なのか」よりも「雪面の状態がどうなっているか」の方が、滑りに大きな影響を与えていることが分かったのです!
スキー板の滑りをよくするにはどうしたらいいのか・・・
低温実験室での雪の実験が始まりました。
【雪や氷がよく滑る理由】
ところで、なぜ雪や氷はよく滑るのでしょうか?
その理由はまだよく分かっていません。
かつては「圧力によって氷が融け、発生した水の潤滑作用で滑るのだ(圧力融解説)」と考えられていましたが、1939年に否定されました。
現在では「摩擦による発熱によって氷が融け、発生した水によって滑る(摩擦融解説)」という考え方が最も広い支持を得ています。
一方で、1970年代に富山大学の対馬教授が「そもそも氷の表面は固体状態の時から摩擦が小さく滑りやすい(凝着説)」という説を発表し、支持は少ないながらも様々な経験や実験結果を説明しやすいことが分かっています。
たとえば・・・
・春スキーで雪が湿っぽいと滑りにくい
・氷や硬く押し固まった雪面は、南極などの水ができにくい極低温でもよく滑る
・氷は摩擦で発熱する前でも静止摩擦が小さい
これらは摩擦融解説よりも、凝着説を使った方がうまく説明することができます。
【雪とスキーの研究がどこに役立っているか】
雪とスキーの研究は、スキー板の開発やスキーの指導・スキー場の整備はもちろん、屋根や電線にくっつく雪(着雪氷)の研究や滑りにくい冬タイヤの開発などにも役立てられています。
香川先生は「意外と色々なことに役立ったのが嬉しい!」と、おっしゃっていました☆
【香川先生の「成功の秘訣」とは】
1. やってみたいと思ったことを自分なりに調べてみる
2. やるときは一生懸命やってみる
3. 一人でできないことは、みんなにお願いして協力してもらう
4. 悩んだら何にもできなくなるのでまずやってみる
アイディアはあっても実行に移さない私には耳が痛い・・・いえいえ、大いに参考にさせていただきます!
さて、こういった努力の末に香川先生がたどりついた南極・・・そこはとても素晴らしい大自然あふれる場所だったそうです☆
「この講演をきっかけに、南極や公立小松大学に興味を持っていただけるととっても嬉しいです!」
先生は少年のようにキラキラ光る目で、そう講演をしめくくられました☆
(私は南極の大自然以上に香川先生のバイタリティーに感動しました)
最後になりましたが、講演会にご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!!
(文:解説員N)