開館時間
4/1~9/30 9:30~18:00(有料観覧受付は17:00まで)
10/1~3/31 9:30~17:00(有料観覧受付は16:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌日。GW、夏休みは開館)、年末年始
更新日:2020年01月17日
各分野の専門家にご講演いただく
「プロフェッショナルトーク」!!
今回は・・・
金沢大学・尾崎光紀准教授による
オーロラのお話です☆
女子高校生が南極を目指すアニメ『宇宙よりも遠い場所』の人気によって、新たな「聖地」になりつつある昭和基地・・・
尾崎先生は大学院生時代、その昭和基地にご滞在されました。
アニメのタイトルは、元宇宙飛行士の毛利衛さんが昭和基地へ招待された際、
「南極って宇宙よりも遠い」
「スペースシャトルで宇宙には5分で行けるが、南極には飛行機で5日かかった」
「こんな遠い場所ってあるんだな」
と発言されたことに由来します。
が、船で1ヶ月かかって南極へ来た尾崎先生。
「5日なら早いじゃないか!」
とツッコミを入れたくなった・・・とかならなかったとか(;^ω^)
南極の紹介として、尾崎先生が濡れたタオルを振り回している動画や、食事の写真、建物が雪で埋まっても開けられる内開きのドアの写真などを見せていただいたあと、プラネタリウム番組『オーロラ 生命の輝き』が上映されました。
ドームいっぱいに広がったのは、カナダで撮影された美しいオーロラの映像☆
尾崎先生いわく、
「実際のオーロラはもっと暗くて白いのでプラネタリウムで見るのが一番!」
・・・本物のオーロラを見たいと思っている方はちょっと残念だったでしょうか?
ただ、オーロラが激しく舞う「ブレイクアップ」という現象は、実際のものも映像と同じくらい美しいとのことですので、ご安心ください!
さて、そもそも尾崎先生はなぜ南極に行かれたのか・・・
それは、オーロラと電磁波の関わりを研究するためなのです!
それを説明する前に、まず自作の「電磁波を音に変える装置」を取り出した尾崎先生。
装置を時計に近づけると「ブツッ、ブツッ・・・」という規則正しい音がするではありませんか!
また、PCやスマートフォンでは複雑な雑音が聞こえました。
電子機器は、意図する/しないに関わらず電磁波を出していることの証拠だそうです。
「電気が流れている物は、電磁波を出している」
この事実を確認した後は、いよいよ電磁波とオーロラのお話です!
(以下は、尾崎先生のお話の要約)
太陽は電気を帯びた粒子(プラズマ)を吹き出します。
それが地球まで飛んできて、地球の磁力線に沿って降下し、大気と衝突して光るのがオーロラです。
ところが、時速数百kmで太陽から飛んでくるプラズマであっても、地球大気の深くへ降りるにはエネルギーが足りません。
何者かに背中を押され加速することで、初めて地上100kmの大気まで到達し、美しいオーロラを発生させるのです。
しかしこの「何者かに加速されたプラズマ」は、実は高エネルギーの放射線となって人工衛星や宇宙飛行士に害を及ぼしたり、オゾン層を破壊する原因にもなっています。
そのため「オーロラを調べること」つまり「プラズマを加速させる仕組みを理解すること」が、安全な宇宙利用や環境問題の解決の糸口につながっているのです。
プラズマを加速させ、危険な放射線に変えている犯人は誰なのか・・・?
それは・・・「コーラス波動」と呼ばれる電磁波です!
(音に変換すると鳥のさえずりのように聞こえることから名付けられました。)
電子が地球の磁力線に沿って動くとき、そこにらせん状のコーラス波動があると、加速されます。
コーラス波動はオーロラになれない弱いプラズマで、それがほかの弱いプラズマの背中を押しているのです。
しかし、そのコーラス波動が地球の周りに、どれくらいの領域に渡って現れるかまではよく分かっていませんでした。
そこで尾崎先生らは、日本の人工衛星「あらせ」を使い、磁力線に沿って発生するコーラス波動の観測を宇宙から行いました。
またそれと同時に、「あらせ」が見ている磁力線とつながる場所で、地上からオーロラの撮影を行ったのです。
その結果、宇宙でコーラス波動が起こると、呼応するように地上で「特殊なオーロラ」が現れる様子がとらえられました。
逆に言えば、この「特殊なオーロラ」を見れば、宇宙のどの領域にコーラス波動が発生しているかが分かるということになります。
「特殊なオーロラ」を「宇宙の電磁波を見るディスプレイ」として利用できることが分かったのです♪
そこで尾崎先生らのチームはその「特殊なオーロラ」を調査し、
コーラス波動は、地球半径の約0.2倍の領域に広がっていることをつきとめました!
今後は人工知能を活用することによって観測の精度を高め、宇宙におけるコーラス波動の広がりが分かるハザードマップを作成し、リスクの少ない人工衛星の軌道設計など、宇宙利用の拡大に役立てようと考えているそうです。
また、現在水星に向かって飛行を続けている水星磁気圏探査機「みお」。
そこに搭載されている金沢大学が開発した電波探知機が、地球のように磁場を持つ水星にどんな電子と電磁波の相互作用があるのか、詳しく調べる予定になっています。
オーロラは、宇宙からの手紙・・・
そんな言葉が心に浮かんでくる尾崎先生のお話でした!
そして講演の後も、先生の周りは質問したいお客様やスタッフで大賑わいになりました。
「南極滞在中に一番つらかったことは?」という質問に、
「人間関係です!」というお答えが・・・
大自然より恐ろしいもの・・・それは人間なのかもしれません(;^ω^)
金沢大学では、独自の超小型衛星を開発しています。
今後、ヒルズと金沢大学の提携イベントとして、その衛星に関する講演会も続々と開催される予定です☆
非常に楽しみですね!!(≧▽≦)
最後になりましたが、今回のプロフェッショナルトークにご参加された皆様、
本当にありがとうございました!!
(文:解説員N)